PROJECT
STORY

国内初の工法を採用。超大規模の
鋼製構造物の製作へ。

東京外環自動車道 市川中工事

東京都練馬区から埼玉県を経由し、千葉県市川市に至る高速道路「東京外環自動車道」。通称、東京外環道の三郷南インターチェンジから高谷ジャンクション区間の工事は、開通時期を早めるため工期の短縮が模索されていた。工事を担当する大手ゼネコンのジョイントベンチャーでは、市川中周辺の高速道路を地中に埋めるための幅40メートル高さ20メートルの超巨大構造物を、当初のコンクリート製のものから、鋼製のものに変更することで工期短縮を実現できるのではと考え、横河NSエンジニアリングを含む数社による構造・コンセプトのプレゼンが実施された。当社の過去の実績が大きなアドバンテージとなり、受注へと繋がった。しかし、そこから先に待っていたのは、前例のない挑戦の数々。今回は、このプロジェクトの中心メンバーとして活躍した営業、技術、製作の3名にインタビューを行い、当時の様子を振り返ってもらった。

  • 営業
    今井 誠
    鉄構エンジニアリング営業部
    1991年入社

    住友金属工業時代に入社。以来、鉄構エンジニアリングの技術者として、設計から開発まで幅広く携わり、その後、営業部へ。今回は受注前から製作、工事の段階まで、当社のプロジェクト全体の旗振り役を務めた。

  • 技術
    関口 修史
    鉄構エンジニアリング技術部 技術企画グループ
    1999年入社

    営業の今井と同じく住友金属工業時代に入社。最初は橋梁の設計や開発を担当し、工場での製作管理業務、営業の仕事を経て、再び技術部門へ。今回は、プロジェクト全体の技術マネジメントの大役を担った。

  • 製作
    小山 泰平
    鹿島工場 生産管理グループ
    2014年入社

    大きな構造物に携われる点に惹かれて、横河NSエンジニアリングに入社。生産管理グループに所属し、通常は橋梁の製作を担当している。今回は、プロジェクトにおける製作段階を担当し、試行錯誤を繰り返した。

ジョイントベンチャーからの
相談、受注

今井

今回のプロジェクトは、大手ゼネコンのジョイントベンチャーからの相談という形で始まりました。営業としては、過去に似た工事実績もあったので、ウェルカムな案件だなと(笑)。技術者チームと連携して、より詳しいニーズのヒアリングや現地調査を行い、どんなイメージのものが提案できるか、さっそく作戦を練り始めました。

関口

近い工事実績はありましたが、ここまで大規模の鋼製構造物のプロジェクトは初めての試みでした。しかも、工期を早めるための工事だったこともあり、提案までの検討期間もさほど取ることができず…。加えて、工事現場の上に鉄道が走っていたため、技術マネジメントを担当する者からすると、受注前からシビアな工事になるだろうなということは予測できました。

小山

今回の構造物は大きさもさることながら、構造自体も複雑でした。鋼の板を溶接して鋼製セグメントと呼ばれる部材をまず製作し、さらにそれらを組み立てることで巨大な鋼製構造物をつくりあげていくのですが、最初はどう溶接し、どう組み立てればうまくいくかといったイメージがほとんどついていませんでした。

今井

たしかに、非常に技術力が問われる難工事で、会社全体で受け止める必要がありましたね。営業としては、お客様と十分に会話し、技術者チームの理解を得ながらプロジェクトを遂行させていくことを心がけました。

設計、製作段階は
試行錯誤の繰り返し

関口

設計でまず苦労したのは、今回の鋼製構造物そのものに関する設計基準が存在しなかったということ。似た実績はあるとはいえ、それらの数値がそのまま使えるものではありません。類似した構造物をもとに一つずつ数値を割り出し、それらをお客様であるジョイントベンチャーの担当者の方に確認を得ながら進めていきました。

今井

営業も受注したからといって仕事が終わりではありません。お客様からは受注後に「道路標識を吊り下げるための穴を数千個開けてほしい」や「工事用のハシゴがほしい」といった追加の要望が増えていきます。営業は、そうしたお客様の要望と当社の技術者チームの要望の間に立ち、調整や交渉を行うことも大切な仕事。私自身も受注後はさらに今回の構造物に関する勉強に励みました。

小山

設計部門から製作図面が上がってきても、本当にできるかどうか不安でしたね。生産管理グループでは、どうやって実現するかといった製作手法を考えることからスタート。たとえば、今回使用する鋼製セグメントの原寸大の発泡スチロールを用意し、実際に工場の職人さんが中に入って溶接できるかどうかを検証したり。あと、最終的に何十個もの巨大なパーツが製作されるため、その検査をどうやって行うか。さらに、出来上がったパーツをどうやって現地まで輸送していくか。輸送業者とも話し合ってリスクを洗い出すなど、工場内の製作に止まらない様々な業務を同時に行っていきました。

関口

このプロジェクトでは、鋼製構造物のパーツとなる鋼製セグメントの製作で横河ブリッジや楢崎製作所といったグループ会社の工場もフル活用させていただきましたし、何十個ものパーツの仮組み立てには横河技術情報の開発したシミュレーションシステムを活用。現地の施工では再び横河ブリッジの力を借りました。そう思うと、このプロジェクトは当社といより、横河ブリッジホールディングスグループの総力を挙げて取り組んだ事例といえるかもしれませんね。

誰も経験したことのない
工事に挑む。

今井

製作期間も終盤にかかってくると、お客様による鋼製セグメントの検査が入るのですが、こうした段取りをつけるのも営業の仕事です。そして、検査を行えば、修正すべき宿題が見つかります。今回で言えば、「鉄の錆が気になる」といったもの。性能にはまったく影響がない程度でしたが、錆部分に処理を施すなど、対策を講じてもらいました。こうしたお客様の心理的な満足度をケアし続けることも重要な営業の役割ですね。

小山

約1年間に及ぶ製作期間を経て、いよいよ現地での組み立てです。とはいえ、工場から鋼製セグメントを送り出した私たちの不安がなくなることはありません。パーツが足りなかったらどうしよう…。ズレが生じて組み立てられなかったら、どうしよう…。常に心配でした。

関口

どんなに完璧な設計図面を引いていたとしても、やはり現場では大小のハプニングが起こります。また、現地で工事を担当する人たちからしても、今回は誰も経験したことのない内容。「この鋼製構造物の上にクレーンを乗せて作業をして良いか」といった質問なども、私たちのところに入ってきます。製作担当の小山くん同様、私も気が休まることはありませんでした。

小山

でも、その分、工事が無事に完了した時の達成感はじつに大きなものでしたね。

関口

納期も、見栄えもバッチリ。ジョイントベンチャーの掲げていた目標工期、出来方の目標値ラインをクリアできた時は、本当にホッとしました。

今井

あと、今回のプロジェクトは、仕事を依頼してくださった大手ゼネコンさんの社内コンテストでも技術表彰をいただくことができました。こうして一つひとつ信頼を積み重ねていくことが、次のプロジェクトの受注へと繋がっていくのだと思います。

今回のプロジェクトを終えて。

今井

私たちの工事完了から1年ほど経って、東京外環道の該当区間が開通となりました。今回のプロジェクトは道路整備工事の一環だったこともあり、この完成によって交通集中による渋滞も緩和の方向に向かっていると伺いました。

関口

また、これまでに前例のない、難易度の高い技術を用いた工事実績を築けたことで、きっと今後の様々な場所での工事計画の大きな参考となると思います。こうしたプロジェクトをみんなで苦労し、みんなで完遂できたことは本当にうれしいですね。

小山

私自身も、チーム一丸になって取り組めたことに大きな喜びを感じています。船橋や大阪の設計チームとは何度もテレビ会議や電話でやりとりし、現場にも足を運んで、工事の人達とも一緒に飲みに行きました。完成後の打ち上げで、協力会社の職人さんも含め、全員でプロジェクトの苦労話や仕事へのこだわりを語り合った時の楽しさ、熱感はそう忘れないだろうなと思います。

今井

そうですね。改めて、今回は横河NSエンジニアリングとしての結束、横河ブリッジホールディングスグループとしての総合力を感じたプロジェクトだったと思います。