PROJECT
STORY

世界中の競技者が訪れる、 パラスポーツ専用体育館完成をつくる。

東京・お台場 日本財団パラアリーナ竣工

東京・お台場に建つ日本財団パラアリーナは、2018年5月に竣工したパラアスリートのための練習施設。これまで体育館で行う車いす競技は、床を傷つけるなどの理由による利用拒否やバリアフリーの問題で、日常的な練習場所の確保が困難とされていた。2020年を控え、世界中から訪れるパラスポーツ競技者のためにも一刻も早く求められていた専用体育館の建設。そうした中、本プロジェクトの依頼が営業・宮田のもとに舞い込む。高品質、短工期、低コストで室内無柱の大空間を実現させるシステム建築工法に白羽の矢が立ったのだ。今回は、このプロジェクトに関わった営業と技術部門の若手2名にインタビュー。当時の苦労やプロジェクトを通して見えてきた横河システム建築の魅力について語ってもらった。

  • 技術
    堀部 直也
    生産情報部工務課
    2013年入社

    地元愛知にあるトヨタスタジアムの可動式屋根に憧れ、大学では建築を専攻する。生産情報部の鉄骨課、設計課を経て、現在は工務課に所属。本プロジェクトでは、構造図面を部品図面にするためのお客様とのやりとりと、工場で製作する部品のデータ作成・管理を担当する。

  • 営業
    宮田 雄斗
    東京営業部仙台営業所
    2015年入社

    インフラの仕事に興味があり入社。本社で3年間勤務し、現在は東京営業部仙台営業所でブロックマネージャーとして活躍中。本プロジェクトでは、営業として、お客様との窓口を担当する。建物のプランニングや必要に応じた交渉、社内の他部署への情報共有を任される。

2020年に向けて。システム建築の強みを生かす

宮田

私たちの営業のスタイルは、全国のゼネコン、ビルダーからの依頼が中心です。私がもともと担当させていただいていたお客様から2017年7月に本プロジェクトのお話をいただきました。横河システム建築の得意分野は、体育館のような大きな空間をつくること。通常、多くの建物は在来建築という建築工法で建てられていますが、私たちの扱うシステム建築は、営業・設計・生産までのフローをワンストップで行える建築工法。そのため、在来建築よりも早く・安く建てることが可能です。本プロジェクトは依頼の段階でとくに竣工時期に対する要望が強かったため、システム建築工法の強みを活かせると感じ、提案をさせていただきました。2020年の一大イベントを控え、パラスポーツに寄与できるのはうれしかったですが、納期を必ず守る必要があったので、プレッシャーもありました。

堀部

依頼をいただいたタイミングでは、私の所属する生産情報部がまだ具体的に動くことはありません。お客様との契約が交わされ発注された段階で、実際に現場で建てる部材に情報を与え、部材の管理業務を進めていきました。建方用の図面を含めてお客様からフィードバックがいただけると、次はいよいよ製作に入っていきます。

構造設計、製作。デザイン性に富む建物への挑戦。

宮田

当社の営業は受注前だけでなく、受注後のものづくりにも大きく関わっていけることは魅力でもあり、苦労する部分でもあります。製作の最初に行う構造設計段階では、今回の場合、お客様からの計画変更の要望にどう応えていくかということに苦心しました。たとえば、「体育館に空調を付けられないか」「バスケットのリングを取り付けることは可能か」など、設計の段階で新たな要望が増えていくことがあります。お客様はより良い施設を作りたいという思いがあるのでこうした要望は当然起こりうることなのですが、計画変更の度に「増量分の荷重に建物が耐えられるかどうか」といった検討し直す必要がありました。納期から逆算すると、そう時間はかけられない。その都度、上司や他部署の方々とスピーディに相談を重ね、計画に遅れが生じないよう進めていきました。

堀部

生産情報部はまずは設計部が書いている構造図面から新たに現場の建方用の図面を起こしていきます。構造図面は単線で描かれた図面なので、箇所によっては図面どおりに部材が納まらないということがあるからです。また、構造図面が意匠図と整合しているかも確認します。たとえば今回は、通常のシステム建築に使用する「×」の形をしたブレースという部材を使わない空間を実現したいという要望がありました。2020年にはパラアリーナに世界中からパラスポーツの関係者がいらっしゃるため、お客様は建物のデザインに対する強いこだわりも持っていたのだと思います。ただ、基本的にシステム建築はある程度の制約を設けることで納期や予算を抑えている面もあるため、その落とし所を見つけるのは大変でした。

宮田

その部分は毎回、悩みます。でも、納期や予算をきちんと納めることも、私たちの重要な仕事ですからね。

堀部

そういう意味では、今回は通常以上にデザインに対する要望に応える箇所があったため、いつもよりお客様とのやりとりを多くし、短工期へのオーダーと両立させました。

施工開始から完成まで。共同作業をやり抜く。

宮田

施工時には、現場で追加の部材が発生したりトラブルがあったりすると営業に連絡が来るので、その都度お客様と交渉をします。ただ、今回は工事の担当の方がベテランだったこともあり、施工段階での相談はほとんどなかったですね。お客様と接する時に気をつけていることは、状況に一喜一憂するのではなく、何に対して不満を抱えているのかという本質を見極めることです。たとえば、設計している段階で部材が納まらず、開口部がつけられなくなってしまうことがあります。そういうときにお客様から問い合わせが来た場合は、どうして開口部が必要なのかを伺い、代替案を提案して納得いただけるように交渉しています。

堀部

私たち横河システム建築では、鉄骨や屋根、外壁などはつくりますが、設備や内装などは他の協力会社にお任せしています。全員で一緒になって建物を完成してく中で、調整の難しい箇所や対応に苦労することもありましたが、完成したと聞くと毎回うれしいですね。今回も、完成写真を見た瞬間の感動は最高でした。

宮田

日本にパラスポーツの練習場は数少ないですし、バスケットボールコートが2面入るほど大きい空間を短工期で実現できたことは自慢ですね。大手ゼネコンで働けば、建物全体を見られると思いますが、私たちは建物を一から作るので、ものづくりの達成感があります。

堀部

この物件に限らず工場を増築したり建て替えたりするプロジェクトに携わると納期が厳しい場合も多いですが、そこにはお施主様の、すぐに施設を使いたいという要望が背景にあると思います。普段は現場施工用の図面と向き合うことがほとんどですが、納期をきちんと守ってお客様から感謝してもらえると、やっぱりうれしいですね。

プロジェクトを終えて見えてきた会社の魅力

宮田

今回のプロジェクトを通して感じたことは、助けあい、協力し合う文化が根付いているということです。上司の方に丁寧に指導いただける環境や、営業同士お互いに知識を共有したりアドバイスをしあったりする体制が整えられているおかげで、なんとか問題無くお客様に納品することができました。私は経営学部出身ですし、入社当時は建築の知識があまりありませんでしたが、3年目でこのプロジェクトをやりきれたのは、こうした助け合いの文化のおかげです。

堀部

当社の良いところは短納期、スピード感を要求されるプロジェクトが多いので、1人1人が携わる物件の数が多いことから、若いうちに技術者として多くの経験ができるところです。正直、失敗をして現場で調整してもらうこともありますが、失敗を経験できるからこそ、成長速度も速いです。

宮田

このプロジェクトで、他部署の方にどのように情報を伝えれば仕事がスムーズに進んでいくかということを学びました。自身の業務範囲だけでなく、会社全体としての仕事の流れをより意識できるようになったと思います。今後は、まずは自分が担当しているエリアにおいて、倉庫や工場などを建てる際に弊社のシステム建築が標準工法になることです。将来的には、日本中でシステム建築が標準工法になるようにしたいです。

堀部

この仕事の魅力は、自分が携わったプロジェクトが点在している自分色の地図が作れることだと思います。今回のプロジェクトで、普段目にする建築物の納めがわかるようになるなど、学んだこともたくさんあります。今回は叶いませんでしたが今後も、今回のような公共のスポーツ施設や店舗のプロジェクトに携わり、完成後に自分で利用することが夢です。