PROJECT
STORY

建設業界の未来を支える、 新たな3次元モデルの実現へ。

CIM(Construction Information Modeling/Management)プロジェクト

2次元の設計図面を属性情報を付加した3次元情報データに変換し、たとえばパソコンの仮想空間上で部材の製作や組み立てを行うことができるようにする3次元モデル。CIMとは、この3次元モデルを活用し、2012年から国土交通省が推進する建設業務の効率化を目的とした取り組みのこと。横河技術情報では、約20年前から工場を中心に社内の効率化や生産性の向上を目指して3次元モデルを使っていたが、建設業務全体の効率化や橋梁の維持管理など、より幅広く3次元モデルを活用できるよう、このプロジェクトが開始した。今回は関わり始めた時期こそ違えど、同じ熱い思いを持って臨んでいるプロジェクトマネージャー、開発リーダー、開発担当者の3名にインタビュー。CIMのプロジェクトにおけるやりがいや面白さ、横河技術情報の魅力について語ってもらった。(注:国土交通省は2018年途中よりCIMをCIM/BIMとの表現に統一している。)

  • 技術部
    田部 成寿
    1983年入社

    横河技術情報が独立する前の情報処理事業部時代から、橋の設計や図面の作成、情報処理に携わる。このプロジェクトでは、プロジェクトマネージャーとしてチームを指揮する。

  • 技術部第二課
    中川 真介
    2001年入社

    入社以来、田部とともに働く。社外の委員会に出席して情報収集を行ったり、他社との打ち合わせに参加してプロジェクトの方針を決定したりするなど、開発のリーダーを務める。

  • 技術部第二課
    嶽本 啓太
    2016年入社

    大学では都市生活を支える情報システムについて学ぶ。CIMに興味を持ってプロジェクトに参加し、設計段階のシステムの開発を担当する。若手の中心として活躍する3年目。

プロジェクトの始動。それぞれの役割。

田部

当社では、もともと20年くらい前から3次元モデルによる工場製作の効率化に取り組んでいました。2012年から国交省が旗振り役となって、3次元モデルを使って建設業界全体のIT化を進めるべく、CIMを推進し始めたのです。2017年にはCIMを導入するためのガイドラインも発表され、私たちもこれまでの知見を活かしながら、CIM関連の新しい商品やサービスをつくっていこうということで改めてプロジェクトが立ち上がりました。

中川

私も十数年前の入社当時から3次元モデルの開発に携わっていたので、CIMが始まると聞いた時は「今さら?」という感じはありました。実際、私たちが先行していましたが、同業他社も似たような取り組みはすでに行っていましたしね。

田部

ただ、今回のCIMでは、3次元モデルを活用する領域を計画・設計・製作・施工はもとより維持管理まで、もっと幅広く使っていこうというもの。建設業界で共通のルールをつくるため、会社の枠を超えて協力し合う必要がありました。

中川

だから、プロジェクトのマネージャーである田部と私は社外での情報収集を行ったり、他社のシステムとのデータ連携のために同業会社と話をしながら共通のルールを決めていったりしていました。それまで仕事で同業他社と関わることがなかったので、そこでのやりとりは良い経験になりました。

田部

いろんな団体や関係者に説明したり、交渉したり。そもそも、建設業は一社では完結しない事業です。それにCIMは国交省が推進しているプロジェクトということもあり、一つの会社だけで勝手にやるわけにもいかない。そうしたパートナーとの情報交換や情報共有は苦労しましたね。

嶽本

私はCIMが推進された2012年はまだ学生でした。しかし、その当時からCIMの将来性に興味を感じていて、入社後に社内でCIMのプロジェクトの参加メンバーを募っていた時、「ぜひ、やりたい」と申し出て参加することになりました。若手の意見も聞いてくれる環境で本当に良かったです。ちなみに、現在は要件に合わせたシステムの開発を、メインにやっています。

中川

そう。技術的なところは、かなり嶽本くんに任せています(笑)。

3次元モデルの開発にかける熱い思い。

中川

今回のプロジェクトで新たに開発に挑戦したのが設計段階での3次元モデルです。設計段階は製造段階に比べると部材や部品についての情報が少ないので3次元モデルにすることが難しく、試行錯誤を繰り返しました。また、鋼橋は、他の土木構造物と比較すると、サイズが大きく部材や部品の数も多いため、そのまま3次元モデルを作ると、今のパソコンの性能でも全然動かないぐらいのデータ量になってしまいます。実用性のないアプリケーションになってしまわないよう、ベースとなる開発言語の選定と、開発するアプリケーションの検討などに苦労しました。

嶽本

でも、その甲斐あって、2次元の図面情報が3次元のモデルとして立体的に表示できた時の感動は大きかったです。やはり3次元のモデルは2次元の図面に比べて視覚的にわかりやすいんですよね。苦労は多かったですが、もともとシステムを組むことが好きだったし、開発自体は楽しめました。また、グループ会社が自分の作ったシステムを使っているところを見たりすると、自分も鋼橋の製作に携わっていることをすごく意識して、やりがいを感じました。

田部

他社も同じようにCIMの開発を行う中で、「いかに早く、使いやすいものを実現するか」も大きなポイントでした。これまでと全く違うものを発表しても、世の中に受け入れられなければ、それは実現したとは言えません。また、3次元モデル自体は、お客様である橋梁メーカーやゼネコンからの直接のニーズではないので、「この3次元モデルを使えばこんなこともできるんですよ」という発想力や提案力も求められました。

CIMがもたらす橋梁の未来、建設業界の未来。

田部

CIMの良さは、全工程で3次元モデルを活用することで、つくる前から出来上がりの姿が仮想的に見えることです。しかも、橋の製作や架設の実務で使えます。橋に使われる多数の部品のモデルを紙の図面から起こすのは難しいため、実務で使える3次元モデルを簡単に作る手段も求められていました。

中川

設計図が3次元モデル化できることで、部材と部材がぶつかっているとか、溶接作業ができないとか、細部でのいろいろな問題を事前に発見できます。製作や施工の現場で部材がぶつかることが判明すれば、生産性が落ちますよね。CIMは、そういう現場での問題を防ぐことができます。

嶽本

CIMのモデルを実際の地形モデルに置いて、景観の問題がないかも確認できますよね。

田部

国交省はこういう3次元モデルを住民への説明に使ったり、現場作業者の安全教育に使ったり、様々な場面で一貫して使おうとしているんですよね。建築物の老朽化が進みつつある今後の公共事業は、つくるだけではなく、どう維持・管理していくかが問われています。CIMを公共施設などで使えるようにすることで、一つひとつの橋梁の情報が一般の人にも共有しやすいものになり、橋梁の維持管理の向上にもつながるとうれしいですね。

プロジェクトを通して感じた成長、横河の魅力。

嶽本

今回のプロジェクトは1から作るシステムだったので開発の初期段階は手探りで作業することが多くて苦労しましたが、壁に当たった時に何が問題なのかという仮説を立てて取り組むことで、問題を乗り越える力を身につけることができました。

中川

多くの人と話をする中で見えてきた当社の大きな強みは、ホールディングスの中に、設計・製作部門だけでなく、現場で橋を架設する部門があることだと思っています。他の会社だと提案しづらいところが、すぐ近くに橋のトップの技術者がたくさんいるのでアイデアもいろいろもらえます。実現まで一体となって動けることで、新しいことにチャレンジしやすいことも横河の魅力の一つです。

田部

すべての企業が3次元モデルの現場への導入が追いついているわけではない中で、横河グループは鋼橋建設業界の中でもCIM化が進んでいるトップランナー的存在と言えます。人口も減少するなかで、業務の効率化や人手不足を解決するために、技術を上手に活用することが大切です。そういう意味でも、横河グループの中での横河技術情報の立ち位置は、今後もっと面白くなっていくと思います。このプロジェクトを機に、当社が鋼橋関連システムの中でダントツの企業になることが、私の目標です。