PROJECT
STORY

大型かつ日本初工法の橋に、橋梁のトップメーカー
として挑む。

国道55号 高知南国道路
国分川橋プロジェクト

国道55号高知南国道路は、南海トラフ地震発生時の緊急輸送道路の確保など防災の目的からも大きな期待を寄せられている四国四県を結ぶ「四国8の字ネットワーク」の一部を形成する自動車専用道路。その高知ジャンクションから高知龍馬空港までをつなぐバイパスの途中にあるのが、今回のプロジェクトで取り上げる国分川橋だ。2015年に入札が行われ、横河ブリッジが落札、受注。翌2016年から現場施工を開始し、2017年5月に無事に竣工を迎えた。日本初工法への挑戦に対する期待と不安、四国8の字ネットワークという何十年とかけて完成させる大切なインフラの一部を担う責任など、様々な想いが交差したプロジェクトの当時の様子を、今回は営業、監理技術者、設計の3名のメンバーに語り合ってもらった。

  • 営業
    愛甲 智広
    営業本部大阪営業第一部
    2003年入社

    扱う商材の大きさに憧れ、横河ブリッジに入社。営業として大阪、名古屋を経て、現在は再び大阪の営業部へ。お客様との打ち合わせや契約関係書類の作成など、工事全体のプロデュサーとして活躍している。

  • 監理技術者
    細木 誠
    大阪設計第一部設計第一課
    1997年入社

    学生時代に大手の橋梁メーカーに憧れる。入社後に設計課、工事課を経験し、現在は設計課に所属。本プロジェクトでは、監理技術者という立場で現場作業の技術的事項の管理や橋の出来上がった形の管理を行った。

  • 設計
    宮定 龍司
    大阪設計第二部
    2009年入社

    巨大な建築物に関わりたくて入社を志望。入社当初から設計を担当し、歩道橋からジャンクションといった大きな橋梁まで様々な橋の設計に携わる。本プロジェクトでは主に、製作に入る前の図面や設計計算書のチェック、構造変更などを担当した。

 

15社競合の末に
大型案件の受注を勝ち取る

愛甲

「国分川橋の工事が始まりそうだ」という話自体は10年ほど前からがあったのですが、2015年にいよいよ入札に。この工事は高知南国道路の中でも難易度が高く、そのうえ規模が大きな工事。技術提案と価格提案の2つが求められる大がかりな案件でした。大手建設会社や橋梁メーカーがこぞって応札。全部で約15社の競合でしたね。自社の大きな実績になる案件。当然、どの会社も熱心に営業していましたが、私たちは橋梁のトップメーカーとして負けるわけにはいかないという気持ちで臨みました。

細木

大きなプロジェクトであり、さらに多軸台車と呼ばれる特殊車両に橋を載せて移動させるという内容。正直なところ、最初は不安半分、楽しみ半分といった気持ちでした。しかし、日本で初めての一括架設工法で行う今回の工事は、きっと設計から現場まで、大きな一体感を味わえる仕事になると思っていましたね。

宮定

当時の私は、入社から7年が経ったころ。設計としてひと通りの経験を積んだと感じていたので、そろそろ新しい挑戦を…と思っていた矢先でした。巨大なプロジェクトに携わりたいという思いは、入社前から抱いていたので思わず力が入りました。

愛甲

プロジェクトの入札段階は、営業の動きがとくに重要になります。たとえば、技術提案では「どんな技術テーマが出されるか」と予測を付けておくことで、技術チームは準備を進められるため、事前に現場にも何度も足を運び、技術チームと議論を重ねていました。また、入札の際の価格提案は、安ければいいというわけではありません。国で定められた基準に基づいて算出し、原価等を踏まえて価格を決定します。今回、最終的に競合他社よりほんのわずかに安かったので仕事を取ることができました。その瞬間に思わず「よし」と声が出てしまいましたね。

 

徹底的な検証作業と、
緻密な交渉作業

宮定

今回の国分川橋では、大枠の設計は設計コンサルタント会社が行っています。私たちはその図面や設計計算書をチェックし、橋の製作時、施工時にトラブルが生じないように構造変更を行っていくのです。今回は1400トンもの巨大な橋かつ特殊な架設工法ということもあり、「この構造だと問題がある」「品質上構造変更した方がよい」といった変更項目が膨大な数に。製作開始までの期限が決まっているなか、相当数の変更内容を図面に反映させていく作業は非常に苦労しましたね。

細木

宮定さんたちの照査設計と同時に、私のほうでは現場での施工計画を立てていきます。現地の状況を見て、計画している施工方法が本当にできるのかを確認していくのです。特に、今回は現場近くのヤードで事前に橋桁と下部工を組み立て、それを多軸台車で移動し、予め設置していた土台に真上から差し込むという方法。日本初の試みということもあり、それぞれの工事の専門家である協力会社の方々とも議論を重ねたり、様々な数値の測定を行い何度も確認したり。とにかく考えられるあらゆるリスクを洗い出していきました。

愛甲

この時期、設計内容や施工方法に変更があれば、発注側の担当者と予算の調整が必要になります。

宮定

今回でいえば、コンサルタント会社による設計段階では把握できていなかった現地の段差が私たちの調査で見つかり、橋を安全に運ぶためには台車の数を増やす必要がありました。こうした変更を、営業を通してお客様に伝えて確認、承諾していってもらうのです。

細木

設計の後は製作です。今回はある程度、設計段階でリスクを潰せていたこともあり、制作の段階に入ると少しほっとしましたね。私はほとんど見守っている状況でした。

 

約400人の観衆が見守るなか、
真夜中の大一番

宮定

そして、いよいよ施工スタートです。現場からも最初は「本当にできるの?」という声が挙がりましたよね。事前に組み上げる橋桁と下部工部分だけでも全長50メートル、700トン以上の重さがあり、それを一夜のうちに260メートル移動させ、設置しなければいけないという工事でしたからね。

細木

移動させる大一番が近づくなか、私としてはその前の一週間が本当に大変でした。簡単にやり直しができる工事ではないため、様々な協力会社との打合せや確認作業を何度も繰り返しました。

愛甲

営業としては、この一夜の一括架設工事を、お客様にとっても、地元の人たちにとってもより思い出に残るものにすべく、現場見学会を企画。動画に納める手配もしました。約400人の観衆が見守るなか、一発勝負の工事がスタート。自分の仕事を地元の方々にお見せでき、高知新聞夕刊の一面にも取り上げられ、とても感慨深いものになりましたね。

細木

当日はもうやれることは全部やっていたので、橋の上で最終確認を行うなど、余裕を持って見守っていました。20時から交通規制、21時に運搬開始、午前2時から穴に差し込むための位置調整がはじまり、50ミリ程度の誤差しか許されないなか、1時間かけて差し込みが完了しました。すべて終わったのが朝4時くらいですかね。大きなトラブルもなく、工事を終えることができました。何事もなく終わるのが一番です。

細木

差し込みが完了して歓声が上がった瞬間は、本当にうれしかったですね。

 

プロジェクトを終えて実感した、
横河の魅力

愛甲

この国分川橋が完成すると、高知市内から空港までの所要時間はおよそ半分になります。さらに、40年前に計画が発表された四国8の字ネットワークも一歩前進。こうした社会的意義の大きな仕事に携われるのは、横河ブリッジの醍醐味ですね。まさに、私が入社時に志望していた「大きなものを売りたい」を叶えてくれる場所です。また、橋梁は同じものは二つとなく、すべてがオーダーメイド。営業という仕事の魅力は、受注するだけでなくそのプロジェクトをプロデュースできることだと思います。

細木

横河ブリッジの魅力は、大型の土木構造物の設計から製作、現地施工まで、最初から最後まで一貫してものづくりに携わることができることだと思います。大型構造物のぶん、社会への貢献度も大きいですし、達成感も大きい。今後も、国内外問わず、大型の橋梁プロジェクトに関わっていきたいですね。

宮定

どの工事でも、工事完了後にお客様から評価をいただくのですが、今回のプロジェクトでは非常に高い評価をいただきました。お客様から優良工事として表彰されましたし、社内でも初めて功労賞を受領し、設計担当として報われたように思いました。横河ブリッジの魅力は、工場や現場で実物を見られること。当社は建設業でもあり製造業でもあるという特殊な会社です。今回のようにいろいろ苦労して仕上げた図面の通り、橋がつくられていく様子を間近に見ることができるのは非常に魅力だと思います。ものづくりに関心のある学生には絶対おすすめです。