PROJECT
STORY

夜間の高速道路を
通行止め。
難易度の高い工事に
チームで挑む。

名神高速道路
安八スマートインターチェンジ
ランプ橋他2橋工事

このプロジェクトは、名神高速道路の大垣IC〜岐阜羽島IC間の安八町に、ETCのみで乗り降りできるスマートインターチェンジを新設するというもの。この周辺は揖斐川と長良川に挟まれた輪中地域で、これまでも朝夕の通勤時間帯を中心に慢性的な交通渋滞が発生していた。安八町からの強い要望もあり、高速道路を管理する中日本高速道路としても新設を急ぎたいものの、スマートインターチェンジに必要となる橋梁の設置工事は、日本の大動脈ともいえる名神高速道路を一部夜間通行止にする必要があり、その難易度は相当に高いものだった。今回は、この難しいプロジェクトに挑んだチームの中から、営業、設計、所長、工事担当の4名にインタビュー。当時の苦労やプロジェクトのやりがいについて語ってもらった。

  • 営業
    井上 力寛
    大阪営業部名古屋営業所
    1997年入社

    横河ブリッジに入社後、橋梁の営業や大阪工場のスタッフ業務を経て、横河NSエンジニアリングへ。2016年より名古屋営業所長を務める。このプロジェクトでは入札から竣工まで、全体を仕切る営業として奔走する。

  • 設計
    道田 和樹
    設計部大阪設計グループ
    2014年入社

    他の橋梁メーカーを経験した後、横河NSエンジニアリングに転職。このプロジェクトには、基本設計の後の詳細設計を前任者から引き継ぐ形で参加。タイトなスケジュールのなか、確実な仕事を遂行していった。

  • 所長
    飴谷 聡
    工事部計画グループ
    2004年入社

    入社以前には架設工事の会社で働いた経験を持つ。横河NSエンジニアリングでは、いくつものプロジェクトで現場所長(代理人)の責任を全うし、今回もその安定した采配を見込まれ、施工現場のトップを務めた。

  • 工事担当
    宮崎 大樹
    工事部計画工務グループ
    2015年入社

    今回のプロジェクトでは、橋梁の施工現場における橋桁の出来形品質管理や工程管理、安全管理などを担当。一つ前のプロジェクトでは、水戸の現場を経験するなど、日本各地の施工現場を飛び回っている。

入札から受注、契約手続きへ

井上

プロジェクトのスタートは営業。公示を受け、入札に参加するかどうかを決めます。特に、今回は日本の大動脈ともいえる名神高速道路に架かる工事。絶対に失敗できないプレッシャーは相当なものでした。しかし、何事もなく、安全に工事を完了すれば、その分、会社の評価も高まる。営業の判断が問われる中、社内の技術チームとも何度も議論し、横河NSエンジニアリングとして入札に臨むことを決めました。

道田

今回の橋梁設置は長時間の道路規制ができないため、通常の工事手順が行えませんでした。橋桁の鉄骨部分の製作とその上に乗せる合成床版、その側面につける遮音壁などを同時に設計、製作、組み立てる必要がありました。設計としても大きなチャレンジでしたね。

飴谷

工事においても、実際の設置場所近くにヤードと呼ばれるスペースを設け、そこで橋桁を組み上げ、出来上がった橋桁を多軸台車で移動して設置するという特殊な手法を選択しました。今回のプロジェクトへの参加が決まった時から、「これは大変な工事になるだろうな」と予測できましたね。

宮崎

名神高速道路を止められるのは5月のGW明けの数時間のみ。もし何らかの事象が発生して架設できなくなった場合、簡単にやり直しができません。私も「難しい工事に関わることになったなあ」というのが最初の率直な感想でした。

井上

結局、難易度の高い工事とあって、技術提案まで進んだのは当社を含めて2社だけ。最終的に安全面を重視した当社の提案が採用され、受注が決定。営業としては、うれしさと同時に身が引き締まる思いでした。

設計段階、製作段階での
苦労、やりがい

道田

私自身が設計を引き継いだのは、橋桁の鉄骨部分などの主構造の詳細設計が終わり、様々な橋梁の付属物の設計に入るところから。工場ではすでに主構造の製作が始まっており、「早く次の製作図面を…」と急かされていました。発注者である中日本高速道路の担当者様と打ち合わせる機会も多く、常に時間に追われている状況でしたね。

井上

営業は受注するまでは主役ですが、受注してからはプロジェクトが上手く回るように実務部隊の縁の下の力持ちです。特に、今回のプロジェクトではこの段階で架設工法の一部が変更となり、追加予算を発注者様にいただかなくてはいけない状況が生まれました。そのための資料を作り、説明するのも営業の仕事。交渉は本当に苦労しました。

飴谷

工事部ではこの頃、全体スケジュールを見ながら、交通規制の計画を提出したり、工事におけるリスクの洗い出しを再度、徹底的に行ったりしていました。同じような工事を担当した経験を持つ社内の技術者にヒアリングを行い、協力会社の人たちとも何度も意見交換を行いましたね。

宮崎

「工事は段取り8割、作業2割」と言われますが、今回はその意味を改めて実感した現場でした。工事主任の先輩の作った工程表を見ると、思わず「そこまで検証するんですか?」と聞き直したくなるような項目がずらりと並び、作業手順書は「1日につき1人500本のボルトを締める。暑い時は300本…」といった細かな情報でぎっしり埋まっていました。

工事スタート。
夜間の通行止めの山場へ。

飴谷

どのプロジェクトでもそうですが、現場所長として私が心がけていることは3つ。1つ目は、風通しの良い現場にすること。会社も違う、年代も違う人たちが一緒に働く現場で、誰もが本音で言い合える環境を整えることが、現場所長としての最初に取り組む仕事です。2つ目が、工事の無理・無駄をなくすこと。安全にも、品質にも大きく影響するからです。そして、3つ目が先々を考えながら動くこと。現場と本社の間に立って、早めの人材確保の依頼を出したり、地元の人たちとの良い関係を築いたり。とはいえ、今回のプロジェクトでは工事主任をはじめ、信頼できるメンバーが揃ったので、安心して工事を見守ることができました。

道田

工事が始まると、設計はひと段落…ともいきません(笑)。現場に届いた部材に不備があれば設計部門に連絡が来ますし、10メートルの橋桁であっても許される誤差は数ミリから数十ミリ。工場で一度組んだものを分解し、輸送して、現場で組み立て直すのですが、橋が架かるまでは一切安心することはありません。

宮崎

事前準備を徹底的に行っていたとはいえ、やはり夜間架設の当日は緊張しました。ヤードで組み立て多軸台車と呼ばれる車で何トンもある橋桁を少しずつ少しずつ移動させていきます。そして、夜の22時過ぎからいよいよ取り付け作業。私はまさに橋桁の接合部の担当で、「あと何ミリ、下げてくれ、上げてくれ」といったミリ単位の調整を行いました。最後の数ミリの攻防は1時間近く続いたと思います。予定時間内に工事を終えた瞬間は大きな達成感に包まれました。

井上

この夜間工事は、見学会という形で発注者様はもちろん、地元の人たちも招いていたこともあり、ギャラリーからも大きな拍手が起こりました。横河NSエンジニアリングの技術力のアピールにもなりましたし、多くの人に見られていることで、現場で工事を担当した人たちのモチベーションもかなり上がったのではないでしょうか。

飴谷

私はこの夜間工事の瞬間は、現場に設置した本部で発注者様と一緒に見守っていました。それぞれの担当者から「無事に終わりました」という報告が入り、午前4時くらいにすべての片付け作業も終わって、高速道路の通行止めを解除した瞬間はようやく「終わったな」と胸をなでおろしました。明け方、戻ってくるメンバーたちがみんな、とてもいい顔をしていたのがすごく印象に残っていますね。

今回のプロジェクトを終えて。

道田

橋梁メーカーとしての一体感を感じるプロジェクトでした。仕事の喜びや達成感は、いくら一人で努力しても得られません。営業さんや工場、工事に携わるたくさんの方々との協力があってこそ。困った時は助け合える体制で仕事ができていることを改めて実感しました。

宮崎

今回は、事前の準備が大変だったぶん、達成感も大きなものになりました。また、橋づくりは面白いということを改めて感じられるプロジェクトでしたね。今後はより責任ある立場で工事に携わっていきたいです。

井上

今回の安八スマートインターチェンジの開通式典では、安八町長から当社の社長に感謝状が授与されました。スピーチにおいても、社名を上げて感謝のお言葉をいただき、地元の人たちの熱い思いが伝わってきました。また、このスマートインターチェンジが完成したことで高速道路の渋滞も緩和され、さらに安八町への企業や工場の誘致も進んでいるとのこと。決して、観光名所になるような橋ではないかもしれませんが、こうした地元の人たちが心から喜んでくれる橋に携わることができて本当に良かったと思います。

飴谷

私たちの行う工事は、ある意味、地球相手の仕事です。命の危険もある。だからこそ、チームとしての結束が欠かせません。そういう意味では、自分としてはこれまでのプロジェクトの中でも有数のチームワークの良い現場だったと思います。工事現場で協力会社の人を招いてのバーベキューや鍋会は一番やったかもしれません。また、別の現場で一緒にチームを組めるといいですね。